バランス・オブ・パワーとの距離

 調べ物でテクノカルチャー・マトリクス*1を眺めていたら、クリス・クロフォードの書いたコンピュータゲームと暴力性に関する項目に、こんな記述を見付けました。

 こうして表面的には暴力を避けているにもかかわらず、テレビゲームの実質は、根本的にパソコンゲームよりむしろ暴力的である。そのいい例が、これまでで最もあざやかなゲームのひとつとしてゲーム・デザイナーたちから広く注目を集めた『M.U.L.E.*2というゲームである。このゲームはもともとパソコン用に作られたもので、いかなる暴力も含まれていなかった。それなのに、最近出たセガのゲーム機用ヴァージョンでは、移植の際に、作者はこれまでの(そして成功した)暴力を含んでいないデザインに暴力的要素を盛り込むよう要請されたのである。

 セガ版なんてあったっけ…と思い、検索。
http://www.worldofmule.net/tiki-index.php?page=Sega+Genesis

The "Son of M.U.L.E." was in development by Dani Bunten in the early 1990'ies for the Sega Genesis video game console (known as Sega Mega Drive in Europe and Asia/Pacific). The game has never been published, but reached an alpha development stage. Dani did not complete it reportedly because EA insisted on adding "guns'n'bombs" to the gameplay. Dani didn't want to comply to that, which in the end led to the discontinuation of the project.

 プレイヤー間に同盟や条約が発生して、暴力の非効率性を理解できるようなデザインに持っていけたら素敵な気もしますけど、たぶん望まれているのは暴力が活用できるデザインでしょうし、取って付けた逆転アイテムみたいに扱われるのなら、こういう結末も、なんとなくは解るような気が。

*1:http://www.amazon.co.jp/テクノカルチャー・マトリクス-ICC-BOOKS/dp/4871882594

*2:http://megaui.net/fukuchi/misc/videogame/mule.html 何度も書くけど良いゲームです。